氷点下貯蔵庫の実証実験プロジェクト
ちょっとゴージャスなD形ハウス出現
稚内市内から空港に向かって国道238号を走る。大沼に向かう右折の角に、銀色のシートがかけられたD形ハウスが建っている。この11月から始まる、ある実験装置のハウスである。」
『低温凍結熱媒と雪氷による氷点下貯蔵庫の実証試験』
何やら難しそうな名前の実験だが、何をするのだろう。
周囲をホタテ貝ガラで覆い輻射熱を低減する工夫がされている。NEDOと(株)大林組の実験に稚内の山本建設が全面協力している。
雪も氷も新エネルギーだ
雪といえば、ホワイトクリスマスなど雪が珍しい地域の人にはロマンチックな響きもあるだろう。しかし、北海道にとって雪は生活の中で、どちらかといえば厄介な存在だ。
しかし、今や、雪や氷は、新エネ法でも、「雪氷熱エネルギー」と規定され、にわかに注目を浴びている。
これまでただ集めて捨てていただけの雪や氷を、冷房や食物の貯蔵に利用しようという試みは盛んに進められている。
宗谷湾に面した風取り用の窓。
冬季間、宗谷海峡から吹きつける自然の風で氷を作る。
シャッターを開けて貯蔵庫内部をみたところ。中央通路の両端は製氷槽だ。
ホタテは寝かせても旨みは寝かせない?
仕組みはそれほど複雑なものではない。このD形ハウスは内外それぞれ15cmの断熱材に覆われている。
海風を受ける換気窓から冬場の冷風を取り込んで、自然の冷気でハウス内の水槽を凍らせるだけだ。ただ、その水槽の中で凍らせる液体は、水、海水のほか、マイナス3度で氷結する特殊な液体、低温氷結熱媒を使う。
水は零度で凍り始めるが、低温氷結熱媒の氷を使うことで、より低温に保つことができるのだ。
このハウス内に水槽を入れて、生きたホタテやカニを入れておくと、低温のため仮死状態となり鮮度が保たれる。そして、旬をずらして、価格の高い時期に出荷できるようになるのではないかと期待されている。また、米やジャガイモなどの農産物ではすでに実用化されている地域もある。
この氷の寝床が快適かどうかはホタテとカニに聞いてみるしかない。この実験は再来年まで続く計画だ。