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NEDO技術開発機構による実証実験

NEDO技術開発機構による実証実験

なぜ日本最北端の稚内で太陽光発電なのか?

なぜ日本最北端の稚内で太陽光発電なのか?

太陽光発電については、「なぜ日本最北端の稚内で太陽光発電なのか?」と思われる方が多いに違いありません。積雪寒冷地であり、塩害、強風、電力系統の末端、さらには日射量不足など過酷で不利な条件ばかりです。しかし、だからこそ稚内で実証試験をする価値があるのです。

稚内が実証試験地に選定された背景には、気温が低いほど放電が緩和され効率が良いという電気の特性があります。稚内は東京と比較して年平均気温が約十二℃ほど低く、発電効率を考えるとさほど違いがないことがわかっています。

国のエネルギー政策では、現在の日本における太陽光発電量(約一五〇万キロワット)を数十年後には約三~四倍にしようと計画しています。その最初の実証試験として、過酷な条件下での実用性が実証されることで、今後の太陽光発電は日本中のいかなる場所においても実施可能となるわけです。まさに逆転の発想と斬新なアイデアから生まれた私たちの提案が国をも納得させたのです。

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世界最大級で日本初

実証研究所までのアクセス

世界最大級の5メガワット(※1)です。来年ポルトガルに完成予定の太陽光発電は11メガワットで世界最大です。ドイツには5.8メガワットがあり、それに次ぐ第3位なのです。もちろん、日本では最大!そんな大規模な太陽光発電が稚内に?ところが来てしまったのです。

太陽光発電といえば、太陽にプラグを差し込むようなもの。太陽がいっぱいの南国の話じゃないの?それがなぜ稚内に?

海水浴ができるのはせいぜい8月の1週間程度、冬は雪が下から降るほどの猛烈な吹雪の毎日。その稚内に太陽光発電が?

多くの人はそう思うでしょう。だから、大規模な太陽光発電など稚内にできるはずがないと考えたとしても、別に不思議ではありません。

日本全国でただひとつの70億円の大プロジェクトです。全国から10件以上の応募がありました。東京都や千葉県などではトップが動いて誘致を働きかけたといいます。

それに比べて、稚内は人口減少著しい地方都市。それが全国の都道府県を相手に競争し、勝ったのです。たとえ負けたとしても、最終の候補として残ったという事実だけでも誇るに値するでしょう。金額が大きいだけではないのです。このプロジェクトは日本で初めてなのです。

太陽光発電は、地球温暖化防止の動きの中で、個人住宅用や企業・公共施設などの電源として個別に導入され、かなり普及してきました。

その実績は世界トップです。しかし、日本がエネルギーの石油依存状態から脱却するためには、それだけでは不十分です。大規模な太陽光発電が必要なのです。

というわけで、さまざまなエネルギーの開発を担っている独立行政法人のNEDO技術開発機構(※2)は、2030年に向けた太陽光発電のプロジェクトを作成し、未利用地を利用した大規模太陽光発電所の実験場を募集しました。その日本初の実験場として、稚内が選ばれたのです。

自然条件が最悪という点でも、全国ただひとつという点でも、そして日本のエネルギー史上で最初の試みという点でも、何もかもが前例なしです。

  • (※1)1メガワット=1000キロワット
  • (※2)NEDO技術開発機構→正式名称を新エネルギー・産業技術総合開発機構といい、日本の環境保護政策と科学技術開発の一端を担う独立行政法人である。2003年10月に同名称の特殊法人より独立行政法人へと移行した。本部は神奈川県川崎市。

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でも、稚内だからこそ、このプロジェクトをする意義がある!

私たち稚内新エネルギー研究会は、最初からそう確信していました。

積雪、寒冷、強風、塩害。稚内での実証研究が成功すれば、稚内より条件の有利な場所での太陽光発電は簡単にできることが証明される。そのためにも、他の地域が参考にできる大規模発電のマニュアルを作れるのはここ稚内しかない。そういう想いで、昨年から、プロジェクト誘致のために、大阪、東京、札幌と文字通り日本全国を何度も駆け回りました。

稚内は風のまち!普段は厄介モノでしかない風。しかし、その風こそ稚内の未来をつくるエネルギーになるという逆転の発想が、私たち稚内新エネルギー研究会の原点であり、出発点です。環境とエネルギーを輪にしたまちづくりが稚内の再生の鍵です。

それにしても、このプロジェクトはどういう実証研究なの?それが稚内にとってどんな意味があるの?そう思うかもしれません。ポイントは二つ。

まず、実証研究の内容はこうです。

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1.太陽を暮らしのエネルギーに

この大規模太陽光発電で発電する電力は5メガワットです。いま宗谷丘陵に建っているウィンドファームと市内の風車を合わせた総発電量は76メガワット、稚内市の消費電力の70%をまかなっています。ですから、太陽光発電の電力と合わせたら稚内の電力の4分の3は自然エネルギーで供給できることになります。これだけの量の電力が幌延にある変電所を通って、北海道電力の電線網に流されます。

ところが、風力発電が風まかせであるのと同じように、太陽光発電も太陽まかせです。とても不安定な電気です。でも、私たちは風がなくても、太陽が沈んでも、そんなこととは関係なく、スイッチひとつで電気を使う生活をしています。

こういう生活が可能なのは、石油やウランなどを昼夜問わず燃やし続けて電気をつくり、安定した電気を各家庭に送り届けているからですが、この電線に不安定な太陽光の電気を大量に送り込んだらどうなるでしょう。昼は一気にたくさんの電気が流れ込み、夜は電気が減るといった、非常に不安定な状態が生じます。おまけに、地吹雪が激しい稚内の冬では、吹き溜まりに太陽パネルが埋もれて発電能力が低下してしまうかもしれません。

といいたいわけで、非常に不安定な太陽光発電をこれまでの安定した電線網につないでも悪影響を及ぼさないようにするにはどうしたらよいのか、この仕組みをつくるというのが、このプロジェクトの内容です。

そのために、電気の流れを安定化させるシステムを開発したり、いろいろな種類の太陽パネルの性能を実験したり、また気象予測のシステムをつくるなど、北海道電力を中心とした三つの民間企業と日本気象協会が共同で実証研究にあたります。

今回の2006年から2010年までの5年間で、事業費は約70億円です。専門スタッフも200人近くになります。場所は、道立宗谷ふれあい公園に隣接した市有地を予定しています。

太陽光発電システム

稚内市宝来の市営住宅屋上に設置された太陽光発電システム。ソーラーパネル40枚、総発電容量は4.8kW。住宅の共用部分の電力を供給している。

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2.市民発電所としての事業化

ところが、このプロジェクトの募集に当たって、もうひとつ大切な目標が示されていました。これが二つ目のポイントです。そして、私たち稚内市民にとって重要なのは、むしろこちらの方です。 このプロジェクトを実施するにあたって、NEDOが公表した募集要項には次のように書かれています。

「最終的には、研究開発終了後に大規模太陽光発電所としての事業性が成り立つことに目処をつけることを目標とする」

つまり、これまでの火力発電所と同じように、この太陽光発電所も電気をつくってそれを売ったり、自家消費したりするなど、いろいろな利用の仕方をして、しかもそれが事業として成り立つようにするのが、最終目的だというわけです。

実は、稚内にやってくる太陽光発電所は、5年後の実証研究が終わったら後、稚内市に無償で譲渡されることになっています。つまり、この発電所は稚内市民の発電所になるのです。ですから、私たち市民はこの発電所を使って、いろいろな事業ができるのです。

宗谷丘陵に57基の風車が建っています。太陽光発電と同じように、地球温暖化防止の動きのなかで建てられた日本最大のウィンドウファームです。でも、あの風車はユーラスエナジージャパンという民間企業が、そこで発電した電気を北海道電力に売って収益を上げるというビジネスを行うために建てました。純粋な企業活動ですから、その損益は私たち市民には直接関係しません。

でも、いま稚内にやってくる太陽光発電は違います。これを建てるためのお金は日本の国民が支払った税金です。その発電所は、5年後に稚内市民のものになるのです。ですから、私たちは市民は、それを稚内のまちづくりに活かせるように有効活用することが可能ですし、それが求められています。

NEDOも募集にあたって、実証研究の技術内容と同時に、『実験終了以後の利活用に関する提案』を求めていました。日本の企業の技術水準は総じて高いので技術内容では甲乙つけがたく、最終的にはこの利活用提案の良し悪しが審査の結果を左右するだろうと予想されていました。

そこで私たち稚内新エネルギー研究会は、実証研究を担当する3社、日本気象協会、そして稚内市とともに協議し、役割分担を決めました。

研究会の役割は、こうです。

『エネルギーの普及啓発活動、大規模太陽光発電システムの利活用計画の策定』

という次第で、私たち研究会は5年後の利活用の内容を議論し、NEDOの応募に際して、以下のような3つの具体的な利用方法を提案しました。

エコな暮らしの基金に

第一に、太陽光発電所そのものの利活用に関してです。

発電所で発電された電気の一部分は北海道電力に売られますが、その売電収益は「稚内市民地球温暖化対策基金(仮称)」に積み立てられます。それは稚内を環境とエネルギーの最先端都市として再生されるための資金に活用します。

たとえば、石油価格が高騰していく中で、稚内でも各家庭や事業所で太陽光や小型風車の導入が進むでしょう。稚内オリジナルの風車を作るのも良いでしょう。自動車では石油に代わる天然ガス自動車が注目されていますが、そのためにはエコ・ステーションが必要です。

さらに、酪農地帯の宗谷では糞尿を活用したバイオ発電も考えられます。ゴミ問題で立ち遅れている稚内ですから、市民がゴミの減量や再利用、リサイクルを進める事業も必要です。こうした事業に必要な資金としてこの基金を活用することができます。

また、電気の一部は売電せず発電所に隣接する「道立宗谷ふれあい公園」のビジターセンターやロッジなど施設に供給します。さらに、蓄熱や蓄電を活用して公園遊水場やいろいろな温室栽培施設をつくり、市民の憩いと観光の場として収益増につなげることも考えられます。このように、国と道と稚内市が、そして稚内市民が協働で進める太陽光発電の公園としてアピールすることによって、公園の利活用も進むでしょう。これは公園が補助金に頼らず自立した公共施設として存続していくきっかけとなるかもしれません。

稚内市民発電所展開イメージ

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世界から人々が

第二に、世界最大級で、しかも最も過酷な気象条件下での太陽光発電ですから、ここは世界最先端の研究開発や実証研究、人材育成、さらに各種交流などの場となる可能性があります。今回の実証研究だけでも、専門スタッフが二百人近く関わることになりますが、さらにこの太陽光発電の維持管理やその周囲に関わるさまざまな人材が必要になります。また、世界最大級ですから、多くの視察や学会、国際会議などもでてくるでしょう。このような動きは、太陽光発電に直接関わりそうもない分野にも波及効果を及ぼし、多くの雇用を創出し、稚内を元気にしていく源になるでしょう。

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教育と観光にも

第三に、稚内を環境教育と環境観光最先端の都市として再生させるという構想です。風力発電ではすでに七十四基の風車が回っておりそれだけでも環境とエネルギーの先頭を行っています。それに世界最大級の太陽光発電が加わるのですから、稚内は世界で最も地球環境に優しいまちになりうるのです。それは地球の未来を担う子どもたちにとって誇りになるでしょう。

また、観光は稚内の基幹産業のはずですが、あるアンケート調査で「北海道で行ってみたいと思わない街」の第一位という不名誉な称号をいただきました。それにはいろいろな理由があるでしょうが、観光をただの名所めぐりやツアーで考えるのでなく、環境とエネルギーを組み合わせた体験型環境観光としていくことも考えられます。要するに、子どもたちの環境教育の場として、また環境観光産業創出の場として、太陽光発電所を活用することが可能です。

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市民の知恵と力で

もちろん、これは私たち研究会が応募に際して提出した当面の提案です。これが評価されて採択されたわけですから、基本的にはこの方向で利活用が進んでいくでしょう。でも、大切なことは、この太陽光発電所が「市民発電所」になるという点です。多くの市民の参加と創意工夫によって、この発電所が稚内のまちづくりに貢献し、発電所としての事業性を維持していく。これが、大規模太陽光発電プロジェクトの最終目標です。

私たち稚内新エネルギー研究会は少しでも多くの市民のみなさんが大規模太陽光発電を応援し、積極的に参加していただけることを願っています。みなさんの知恵と力を出し合って、このプロジェクトを成功させましょう!

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